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お知らせ

活動報告 2023.02.14

サポート付き在宅ワークを体験しました。

【センターに相談する前の状況・課題】

昨年よりセンターで支援していただいています、ウミネコ(仮名) です。

私は小さいころから周囲との感覚の違いなどに苦しみつつ、発達障害などの理解がまだほとんどない昭和・平成を何とか暮らして来ました。私がADHDとの診断を受けたのは、自分の子供が起立性調節障害で胃腸の調子が悪くなり、小学校に登校できなくなってからでした。教室やノートが眩しいと訴えたり、字をマスの通りに書けず漢字練習が終えられなかったりと苦しんでいました。子供の症状や困りごとが自分にも当てはまり、もしかしてと一緒に検査を受けたのです。また、そのころから非正規で働いていた就労支援事業所において精神・発達障害の方々と接するうちに、やはり自分も発達障害なのではないかと思っていました。

私は思春期の頃からいじめやからかいのターゲットになりやすく、またどうしてもケアレスミスや遅刻を無くすことが出来ずに、学校の部活動や就職してからの職場では怒鳴られることも多々ありました。また感覚過敏や性別違和のため、女性らしい服装や髪形がどうしてもできず身だしなみや外見についてからかいを受けることも日常でした。

そのようなことから、正社員でもパートでも就労期間が長くても3年程しか続かず、40代で診断を受けて通院や服薬をしながら障がい者雇用で働きましたが、2年前に二次障害の鬱を発症し退職に至りました。また結婚生活もうまくいかず、子供が中学生の頃に18年目で離婚をし、不登校の子供を支えながら独りで子育てをすることになりました。

ご参考までに、今までの職歴を簡単に書きます。年数の長いものは、途中で事業所や部門を変わっています。

〔レジ係2年半・惣菜1年・ウエイトレス3か月・工事作業員7年・支援員6年〕

この中で惣菜と工事作業員は作業的には向いていたと思いますが、年齢差の大きい職場で人間関係に疲弊していました。また、毎日現場や作業・メンバーが変わる事に大きなストレスを感じていたと今になって思います。天候により休日や服装も大きく変わることが辛く感じていました。レジ係はどんなに気を付けてもミスが目立ち、客の視線が気になり不向きでした。ウエイトレスも客の視線がストレスで辛く感じました。支援員は障がいに関する勉強を自分でも深めており、大きなやりがいを感じていたのですが、支援員同士と利用者さん両方との人間関係で苦しみ、鬱発症の大きなきっかけになりました。自分が当事者であるがために、他支援員との精神障害への感覚の違いに余計に苦しんでしまいました。

【センターに相談した理由・きっかけ】

失業手当期間も終わり、ハローワークでの求職もなかなか面接までたどり着かず、体力気力もまだまだフルタイムどころか半日も働くことが出来ない状態で、何とか今の自分の体でも収入を得る事は出来ないかと探しておりました。

そんな時、新聞に載っていたユニバーサル就労支援センターの「サポート付き在宅ワーク」に関する記事が目に留まったのです。今回は試験的な試みと記載されておりましたが、いきなり自分でエージェントに登録して在宅ワークを始めることには不安がありましたので、体験だけでもできればと連絡をさせて頂きました。

【センターで取り組んだこと】

私は事情によりセンターに出向けなかったので、オンラインで聞き取りや説明を行って頂きました。そして、在宅ワーク業務の数種類の中から自分の挑戦してみたいものを2~3選び、依頼を待ちました。

初めは音声を聞き取りデータ入力をする、文字起こしの業務をトライアルで行いました。実際にイヤホンから音声を聞いてみると、何と言っているのか言葉がほとんど聴き取れずに驚きました。私は右耳がほとんど聞こえない感音難聴なのですが左耳には問題が無いため、イヤホンを使えば大丈夫だろうと思っていましたが、まったく聴き取れないのです。

普段テレビを見たり人と話したりするときには無意識に表情や話の流れ・画面のテロップに助けられて理解していたことに気づきました。また、発達障害の特性である視覚優位と聴覚からの理解が難しいという事が、普段の生活の中での暮らしにくさに大きく関わっていた事に、はっきりと気づくきっかけにもなりました。しかし、過去には逆に視覚優位によって業務上で有利であったことも多くありましたので、今回の体験により『これからは得意な事を出来るだけ生かせて、苦手な事との関わりをなるべく避けられる仕事を探して行こう』という目的をしっかりと持つ事が出来ました。 センターの支援員さんと相談し、文字起こしの業務は辞退することにしました。

次に、音声収録という仕事を頂きました。こちらは簡単な設定を元に、3つの役柄を3人でそれぞれ担当し、20分ごとの会議や雑談を3回収録するというものでした。設定の内容を数日前に送って頂き、内容に沿った会話が出来るよう事前に話題や用語などを軽く学習・用意しておきました。

今回の話題は、幸運にも自分に経験のある料理に関る話だったので、少し安心して準備をすることができました。そして決められた設定から話題がはみ出さないようにどうしたらよいか対策を練りました。私はADHDの特性のために、気になった話題に話が脱線してしまうという癖があります。そこで、会話に夢中になりすぎないように得意の視覚を使うことにしました。設定に合わせてイラストやコメントを書いておき、本番はそのイラストを見ながら話を進めました。途中でほかの方の話を聞きながら書き足していき、おかげで最後まで設定を大きくはみ出すこと無く収録を終えることが出来ました。その時使用した走り書きのイラストを出しましたので、ご参考までにご覧下さい。

この音声収録については、当初私は自信が無くしり込みをしていたのですが、センターの支援員さんから失敗しても良いから体験してみませんか、と励ましていただき、不安ながらも挑戦させて頂きました。

今回の体験で、話す事と想像する事、そして雑学を頭に詰め込む事という、今まであまり役に立ってこなかった自分の特性が収入になることもあるのだ!という喜びと自信を持つことが出来ました。お忙しい中支援していただき、センターの方々には感謝しております。ありがとうございました。

【現状と今後】

現在私は、2度の申請と2度の不服申し立ての末ようやく障害年金を取得することが出来、少し余裕をもって仕事を探すことが出来るようになりました。今回在宅ワークを体験させていただいた事で、以前はなかなか踏み切れなかった在宅ワークへの応募を目指して、ハローワークやネットでの求人を探しています。そして、在宅ワークのみで生活を支えていく事にはまだ安定性に不安があるので、自宅から通いやすい企業へ週3~4日・1日に3~4時間程度の勤務が出来るように準備をしています。具体的には、履歴書や職務経歴書などを記入し、主治医と相談の上服薬を調整し睡眠リズムを整えるなど、体調を崩しにくいように対策をしています。

ひとまずの目標としては、今年秋までには在宅かパートでの勤務のどちらかでも、月に3~5万円ほどの安定した収入を得るようになりたいと思っております。以降は体力を着けて勤務日数や時間を増やし、厚生年金や雇用保険に加入できるようになりたいと考えています。

周りと同じようにしなければとあせり、自分の心と体に無理をさせてしまい、鬱になりました。実際体験すると、思った以上に回復に時間がかかり以前のようには戻れないほどダメージを受ける事を身をもって感じています。コロナの後遺症の方もブレインフォグなどもしかしたらたくさんの方が似たような不調に苦しんでいるのかもしれない、と心が痛みます。

これからは自分の限界に早く気づき、理解しあえる人たちと対話し、傷つきを放置せず、楽しく生きていけるようにということを頑張りたいと思います。

ここまで読んで頂き、また、このような文章を書く機会を与えて下さりありがとうございました。